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ビジネスの視点2013年12月号
やっぱり、ピンチはチャンスだった! 危機を跳ね返す経営(津軽鉄道株式会社・社長 澤田長二郎氏)
「ピンチこそチャンス」という。
事実、危機をばねに社内の結束を固めたり、新技術の開発や販路開拓に励み、より強い会社に変えた経営者は少なくない。危機を乗り越える経験が経営者を成長させる側面もある。
自社に落ち度がなくとも、世界規模の不況や天災、風評被害など、危機はどの企業にも訪れ得る。
そのとき自社を取り巻く状況をどう受け止め、どのように舵取りをすべきなのか。挫けることのなかったトップの苦闘に学びたい。
【手記】必死の抵抗が異次元の気力を生みピンチをチャンスに変える
津軽鉄道株式会社 社長 澤田長二郎氏
振り返ってみると、商社マンだったころも含めて、私がこれまで歩んできた道のりは決して平坦なものではありませんでした。ピンチに直面するたび、無我夢中で解決の道を探り、仲間たちの力添えのおかげでどうにか切り抜けてきたように思いますが、一難去ってまた一難で、われながら因果(いんが)な星の下(もと)に生まれたと、心中、苦笑するばかりです。そして、いままた正念場を迎えています。
ピンチはチャンスであるといわれ、私も経験則からそう信じていますが、窮地(きゅうち)に陥(おちい)っている当事者にとって、ピンチはやはりピンチです。ただ、人はそのとき必死に抵抗します。奈落の底に引きずり込まれまいとして知恵を絞り、力の限りあがいて、何としてでも生き残ろうとする。日常の延長線上にあるものとは次元の違う力が発揮されて、結果的に様々な課題を一気に解決してしまう可能性があるわけです。
したがって、ピンチをチャンスに変えるのは、精神論かもしれませんが、あくまで当事者の気力次第と言ってよいのではないでしょうか。過去の私自身を見つめ直してみても、そうした異次元の気力を絞り出すべく、ピンチはチャンスと自ら暗示をかけて鼓舞していた側面もあったような気がします。
いずれにせよ、ピンチに陥ったらつべこべ言わず、肚(はら)を括(くく)って課題を解決するしかない。途中で諦(あきら)めたり、失敗してしまったら、その時点でゲームセットですから、経営者にとってはピンチであろうがチャンスであろうが関係ありません。とにかく、やるしかない。成功させるしかない。そして、克服することさえできれば、苦しんだだけの報(むく)いは得られるはずなのです。商社マンだったころ、私はそのことを実感しました。
1963(昭和38)年春、私は大学を出て、三菱商事に入社しました。配属されたのは資材本部で、板ガラスの輸出などを担当することになりました。当時は、まだ海外旅行すらめずらしい時代ですから、外国との仕事ができる環境に高揚(こうよう)を感じたものでした。
75年からタイに駐在し、4年後、帰国すると、次に赴任したのはオーストラリアでした。82年のことです。三菱商事の子会社である珪砂(けいさ)採掘会社の社長として、それから5年8か月の間、私は妻と同地で暮らすことになります。