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闘うトップ2013年4月号
ケアシューズ「あゆみ」でお年寄りの歩行を助けたい(徳武産業株式会社・社長 十河孝男氏)
高齢者の足や歩き方を徹底的に分析し、ケアシューズという新たな市場を開拓してきた徳武産業の十河孝男社長。同社には、顧客から毎日、10通近い礼状が届けられる。十河社長が、開発の経緯と経営観を語る。
徳武産業の十河孝男社長は、妻のヒロ子副会長と開発した高齢者用ケアシューズ「あゆみ」で、既存のリハビリ靴や介護靴とは違う「ケアシューズ」という新た な市場を切り拓いてきた。1995年の発売当初こそ販売不振に苦戦したものの、口コミなどで徐々に支持が広がり、2003年には販売累計が100万足を突 破。その後、サービスやアイテム数の充実によって加速度的に顧客が増え、昨年は約84万足を売り上げた。累計販売数も700万足に迫る。
高齢者が「あゆみ」を圧倒的に支持するのは、転倒を防ぐために細やかな配慮が施(ほどこ)された機能的な商品力と、個別の多様なニーズを拾い上げる同社の柔軟な対応、そして業界の慣習を打ち破る販売方法にある。
開発にあたり、十河社長は高齢者の足の状態や歩き方を徹底的に調査した。2年間に及ぶ試行錯誤のなかで、夫人とともに訪ねた介護施設は30数か所、モニタ リングした高齢者は500人以上に及ぶ。地面から2センチほど緩(ゆる)やかに反(そ)り返ったつま先や、かかとを支える堅めのカウンター(半円形の 芯)、滑りにくい靴底など、「あゆみ」には高齢者の歩行を支える工夫が行き届いている。
また、顧客からの多様な要望に応えるべく、01年からパーツオーダーシステムを導入。病気や加齢によって左右の足の長さや大きさが変わってしまった顧客の ため、靴底の厚みやかかとの深さ、ベルトの長さなどを自在にオーダーできる体制を整えた。ワイズ(靴幅)も、3Eから9Eまでは既製品で、オーダーでは 11Eにも対応している。
さらに、コスト削減の徹底などによって、業界ではタブーとされてた片足のみの販売を実現。左右別サイズの販売も可能で、むくみや腫れによって左右のサイズが極端に違ってしまったり、片足のみ装具を着用する高齢者などに喜ばれている。