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組織のつくり方2014年4月
飛躍の環境・舞台は整っている! いまこそ、新規事業(日本電鍍工業株式会社・社長 伊藤麻美氏)
わが国の経済情勢は、アベノミクス効果を主要因に復活・再生の段階に進みつつある。消費税増税の影響は懸念されるものの、消費者マインドも一時の落ち込みは脱したと言っていい。
取り巻く環境が整いつつあるいまこそ、中小企業も“攻め”の姿勢に出るべきではないだろうか。
固定観念や既成概念にとらわれることなく発想し、培ってきた技術やノウハウを活かして、新たな柱となる事業を打ち立てた経営者の挑戦の日々を追った。
【手記】 社内一丸の情熱が不可能を可能にした
日本電鍍(でんと)工業株式会社 社長 伊藤麻美氏
時計関連にほとんど特化していた私どもが医療器具のめっき加工に挑戦したのは、2000年ごろでした。それまでも楽器や精密部品などを手掛けることはあったものの、売上の9割近くは時計関連で、医療器具はまったく未知の分野です。しかし、創業以来、培(つちか)ってきた技術を応用すれば不可能ではないと信じて取り組むと、幸い、お客様から評価をいただく仕事ができました。そして、その後も引き続いてご依頼をいただくようになりました。
医療器具のめっきに成功すると、それが自信となり、私どもは他の分野にも積極的に進出するようになりました。やがて、個人のお客様からもご依頼をいただくなど、業界でもめずらしい少量多品種生産を志向した結果、アクセサリーや電気・電子部品、住宅用資材、筆記具、理容器具など、おかげさまで幅広い分野のめっき加工に事業を広げることができました。お取引いただいているお客様は、2,500軒ほどになるでしょうか。
これほど多岐にわたる分野にお客様が広がったのは、正直なところ、当初からそれを意図したからではありませんでした。倒産寸前の危機から抜け出したいという一心で、とにかく少しでも売上を確保しようと努めてきた結果です。その意味で、私どもにとって新規事業とは明日につながる希望そのものだったと思います。