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トップリーダーたちのドラマ2011年12月号
債務超過寸前から立て直した元気のよい営業出身社長(アサヒ飲料・社長 菊地史朗氏)
東日本大震災は、産業界にも様々な影響を与えた。自動車、家電などではサプライチェーンが寸断され、商品供給が遅滞したし、食品や日用品関連業界では、店頭から商品が姿を消すといった状況まで起きた。
各産業、各企業明暗様々だが、さしずめアサヒグループホールディングス傘下のアサヒ飲料などは暗の部分もなきにしも非(あら)ずだが、それまでの経営戦略が震災という非常の危機の時期に生きて、明が割合くっきりと出たケースだと言っていいだろう。
「今上期、主要な商品分野で前年度をクリアできなかったのは、サイダー類だけ。あとはコーヒー、ブレンド茶などすべての分野で対前年度比プラスになった。 一番大きかったのはミネラルウォーター分野で、昨年五月にハウス食品から買収した『六甲のおいしい水』が今年上半期丸々売上に貢献。『富士山のバナジウム 天然水』と合わせ業界シェアもおよそ倍の10%の大台に乗せることができたことだ」
就任して一年半余の菊地史朗社長は温顔を、こう言ってほころばせる。
もっとも最主力のサイダー『三ツ矢サイダー』のみは上期前年度割れとなった。暗の部分ということになるが、これにしても、三月の震災で茨城の工場倉庫に備蓄してあった100万箱が一挙に壊滅したことが主因で、最需要期の夏場以降、盛り返しにかかっている。
そうしたこともあり、この上期、アサヒ飲料はライバル、キリンビバレッジを抜き飲料業界四位へと一つランクアップした。昨年、キリンビバレッジを抜いて三 位に躍進した伊藤園をも、瞬間風速では抜いたという情報もあり、三位の座も指呼(しこ)の間(かん)と言って間違いなかろう。
「弊社の業界シェアが10%であるのに対して、トップのコカ・コーラさんは30%近くあるし、二位のサントリーさんにしても倍の20%。かつてアサヒビー ルが『スーパードライ』で大逆転劇を演じたことがあるからといって、飲料でもというわけにはいかない。これまでもそうだが、今後も基幹商品を中心に着実に 各分野で力を蓄えつつ、革新的な新商品を投入して数字を積み上げて行きたいと考えている」
菊地は、あくまでも堅実経営を志向する。