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ビジネスの視点2014年6月号
智者は前轍を踏まず! 失敗こそ成功の糧(徳武産業株式会社・社長 十河孝男氏)
失敗や挫折をまったく経験することなく、会社を成長させ続けたという経営者はまずいないだろう。むしろ成功経営者ほどチャレンジングであり、それゆえに失敗もある。
その失敗を失敗のままで終わらせず、糧にしているのである。
自ら招いた失敗の責めを受け止めて、経営者としてのスキルを向上させ、自身の“器”を拡げる機会としたトップが、苦闘のさなかで得た学びを振り返る。
【手記】過去に経験した唯一の赤字に社員との対話の大切さを知る
徳武産業株式会社 社長 十河孝男氏
経営者なら誰だって、「あの失敗なかりせば」と反省を込めて振り返る貴重な経験に思い当たるのではないだろうか。もし、それを経験しなかったら、その後の会社も自分もどうなっていたかわからないと思えるような、転機となった失敗である。
私にとって、それは初めて経験した赤字決算だった。1995(平成7)年、2,000万円近い赤字に転落したのだ。社長就任後、11回目の決算にして味わう屈辱だった。会社としても57(昭和32)年に義父が創業して以来、初めての赤字転落で、幸い、その後も経験はない。だが、このたった1回の赤字によって、私どもは金融機関からの信用も嘱望(しょくぼう)する社員も失なってしまった。原因は、私の不明にあった。
ただ、失なったものが大きかっただけに、反省も深かった。思った以上に薬は苦く、よく効いたと言うべきか。この赤字が数100万円程度だったら、私はさほど反省しなかったと思う。逆に、赤字の額がもう少し大きければ、致命傷となったに違いない。この失敗は、まさに天の配剤であった。