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この人に訊く!2012年11月
インターンシップを通じて地域を活性化する人材を育てたい(NPO法人G-net・代表理事 秋元祥治氏)
互いに思いをシェアしインターンシップに取り組む
---地場産業や伝統産業の企業を対象にしているのは、なぜでしょう。
01年の立ち上げの際に、「地域活性化を果たすために、積極的に手を挙げて活動する人々を増やすことこそ重要だ」と考えました。つまり、人づくりです。当初、取り組んでいた講演会やイベントなどはある程度、効果を上げてきたと思います。ただ、継続的に地域を活性化していくには地元の中小企業が元気になり、そこで活躍する人材が増え、地元に暮らす人が増える必要がある。だから、地場産業が元気になれば大きな影響を与えられると考えたんです。
「美濃人の作り上手の売り下手」という言葉があります。地場の中小製造業の場合、よい製品をつくっていても上手に営業したりアピールできていないケースが多い。今年度、長期インターンシップの受け入れ企業は30社を超えています。先に挙げた3つのメリットを実感され、ご好評をいただいています。
たとえば岐阜市に本社を置く、従業員10数名のたまり醤油製造の山川醸造ではインターン生が中心となって地元のパティシエなどと連携し、醤油を活かしたスイーツを開発・展開しました。新たに醸造蔵開放イベントを社長とともに企画・運営した学生もいます。このイベントには、約5,000人が来場し、醤油の直売なども含めて1日で約100万円を売り上げ、現在では定期的に開催されています。他にも、枡メーカーの大橋量器では、学生とともに自社技術を活かした加湿器を生み出し、海外展開を進めています。
インターン生が経営者の右腕としてテストマーケティングに取り組める態勢をある程度、私どもで仕組み化してお手伝いさせていただいているんです。
---地域で企業間の積極的な連携も生み出しているとうかがいました。
インターン生同士の交流を通じて地元の企業が連携し、新商品を生み出す事例も増えていますよ。たとえば、先の山川醸造とおもにベーグルなどをネット販売するアリス開運堂が手がけた「おしょうゆベーグル」などがあります。
企業の組織活性化にも役立ちます。経営者の右腕として仕事に取り組むインターン生はやる気ある学生ばかり。経営者は学生から受ける、経営や人生に関する質問に誠意をもって答えることで、人材を育て上げるヒントや機会を得られるはず。大変僭越ながら、受け入れ企業の経営者の方にはこうした参加する学生の特徴や私どもの思いなどを十分に理解し、賛同していただける場合のみ、インターン生をコーディネートしています。
---インターン生を受け入れる意義について経営者から理解を得ていることが、結果が伴う理由の1つなのですね。
そう思います。単純にインターン生を受け入れたからといって、何かが起こるわけではありません。インターン生1人を半年間受け入れるために、私どもは企業から45万円を頂戴します。それだけ皆さん、本気なんです。地元を活性化したいというわれわれの思いに共感し、自社の利益だけを考えない経営者の方々と企業だからこそ、先に述べたような取り組みの成果が上がるのです。インターンシップの意義を実感していただいた今夏の受け入れ企業はすべて、来春も継続をご希望くださっています。
そうした意味では、受け入れ企業と私どもはギブアンドテイクの関係ではなく、互いの思いをシェアする関係であり、そこにわれわれがNPO法人として事業を展開する意義があると感じています。