厳選記事

  • 闘うトップ2013年10月号

    「幻のスポーツカー」をEVで復活させ京都の底力を世界に発信したい(グリーンロードモータース株式会社・社長 小間裕康氏)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

16年前、わずか206台を納車して販売中止に追い込まれた幻の名車「トミーカイラZZ」。
今春、京都のベンチャー企業グリーンロードモータースが、そのコンセプトを受け継ぎながらEV(電気自動車)として復活させた。
小間裕康社長が、その開発の経緯を語る。

ことし4月、一部の愛好家や関係者が「幻のスポーツカー」と呼ぶ名車がEV(電気自動車)として復活し、話題を集めた。運輸省令による保安基準の改正によって、1997年の発売後、206台を納車しただけで販売中止に追い込まれた「トミーカイラZZ」である。
日本初のピュア・スポーツカー(通常車両の進化モデルではなく、走行性能を追求した狭義のスポーツカー)とされるトミーカイラZZは、1973年設立のトミタ夢工場(2003年、民事再生手続きを申請)が開発。アルミモノコックにFRPをかぶせただけの超軽量ボディなど、斬新な車体設計によって「公道を走れるレーシングカー」というコンセプトを実現した。京都を拠点とする独立系チューニングカー(通常車両に改良を加えて諸性能を向上させた車)メーカーとして異彩を放った同社の代表作で、同社社長の富田義一氏と副社長の解良(かいら)喜久雄氏が念願した理想のクルマだったが、完成したのは「互いに爺(ZZ)になってから」とのネーミングに関する諧謔(かいぎゃく)めいたエピソードも伝わる。販売中止を余儀なくされたとき、受注残は400台以上にのぼったという。

EVとして復活したトミーカイラZZの開発を主導したのは、グリーンロードモータースの小間裕康社長。富田氏から商標権を譲り受けるなど、旧トミタ夢工場のバックアップを得て、2010年から開発に着手。最新の車体設計技術により剛性・強度を高め、国内保安基準をクリアした。造形は、再結成されたオリジナル車のデザインチームが担当した。

価格は800万円。今年度は限定99台の受注生産ながら、反響は大きく、来春納車予定の第一次募集は完売。同社には、すでに100件を超える購入希望の問い合わせが寄せられている。

               ◇ ◇ ◇

実は当初、スポーツカーをつくろうなんて考えてもいなかったんです。そもそも、私どものようなベンチャーが自動車産業に参入すること自体、無謀なのではないかという不安も拭(ぬぐ)えませんでした。でも、EVなら可能性がある。環境問題を考えると、今後、有望な市場であるのは間違いありません。

加えて、小資本でもできます。というのは、EVは構造が単純なんですね。やや語弊(ごへい)はありますが、ラジコンカーに近いと考えて、そう大きく間違ってはいないと思います。ですから、部品の数はガソリン車の10分の1程度で済む。しかも、その大部分は既製の部品を流用することができるんです。より低コストな小型車に的を絞れば、ベンチャーにも勝機はある。そう考えて、創業の少し前、私はEVを開発する海外のベンチャーをいくつか視察しました。

でも、私は自分の見込み違いに気づきました。気づかせてくれたのは、米国のテスラモーターズです。EVの加速感を実感して、衝撃を受けたんです。もちろん、スポーツカーに乗るのは初めてではなかったのですが、いままでとは次元が違うと言うべきか、とにかく味わったことのない世界で、文句なしに面白い。私もEVスポーツカーに挑戦したいと直感的に思いました。そして、具体的に研究してみると、様々な点で好都合であることがわかりました。



≪ 関連書籍 ≫

『実践 経営実学 大全』
(株)名南経営コンサルティング
関連書籍
  • 社員を幸せにしたい 社長の教科書
  • 言いわけばかりで動けない君に贈る33のエール
  • 「売らない」から売れる!どこにでも売っている商品を「ここにしかない」に変える5つの法則
  • ランチェスター戦略「小さなNo1」企業
  • 安部龍太郎「英雄」を歩く
このページのトップへ