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闘うトップ2013年10月号
「幻のスポーツカー」をEVで復活させ京都の底力を世界に発信したい(グリーンロードモータース株式会社・社長 小間裕康氏)
京都電気自動車プロジェクトでは、実際にEVを何台かつくっていました。もちろん、学生を中心としたものづくりですから、すぐに商品化できるようなレベルではなかったものの、経験豊富な技術者に加わっていただけたら、半年後くらいにはモノになると思っていたんです。そこで、技術者を募集したところ、トミタ夢工場の元社員が応じてくれて、彼からトミーカイラZZについての詳しい話を聞きました。コンセプトも素晴らしくて、富田さんと解良さんの情熱もかっこいい。ぜひ、それをEVで復活させたいと強く思うようになりました。
でも、試作車が完成すると、大きな問題が2つあることに気づきました。
1つは、最先端の安全基準に合格できないことです。オリジナルのトミーカイラZZが発売中止に追い込まれてから、すでに10年以上が経っています。その間に認証基準のハードルは高くなっていて、技術的にも格段に進歩していたんですね。その基準をクリアできないと、発売できません。
そして、もう1つは、完成度の問題でした。一見、かっこよくて、加速感もあるのですが、米国でテスラに乗ったときに感じたような快適な加速感ではなく、いわば危険を感じる加速感なんです。スポーツカーというより、ゴーカートですね。それでは、とても商品化なんてできません。私は、自分自身のものづくりに対する認識の浅薄さをつくづくと痛感しました。
いずれも事業としての根幹にかかわる問題で、半年や1年でクリアできるほど易しくない。そのうち、だんだん資金が足りなくなって、ベンチャーキャピタルに出資をお願いして回ったのですが、見向きもされませんでした。担保がありませんから、当然、銀行からの融資は望めません。制度融資なら見込みはあるものの、数100万円程度ではほとんど焼け石に水といった状況で、ほとほと困ってしまいました。
でも、このときもまた私はご縁に恵まれて救われたんです。エンジェルと呼ばれる個人投資家の方々に応援していただくことができたんですね。そのときに出資していただいたグリコ栄養食品元会長の江崎正道さんには、いまも取締役になっていただいています。また、ソニー元会長の出井伸之さんにはご人脈を紹介していただいて、ずいぶん助かりました。
結局、そうした問題をクリアするまで2年半ほどかかったでしょうか。それもまた、京都大学の先生や自動車のエンジニアなど、様々な分野の専門家に協力していただいたからで、たとえば認証基準をクリアする過程では、トヨタ自動車で車体の設計を担当していた技術者の知識と経験がおおいに役立ちました。トミーカイラZZは、まさに様々なご縁のおかげで完成したんです。