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闘うトップ2013年11月号
独自の排水浄化装置を普及させ世界中にきれいな水を届けたい(株式会社アイエンス・社長 吉田憲史氏)
工場排水にもいろいろあって、たとえばメッキ工場と弁当工場では汚れの種類が違います。ですから、浄化のメカニズムも個別に異なるのですが、おおざっぱに言ってしまうと、汚泥(スラッジ)の原因は微生物の代謝不全なんです。「不完全燃焼」と同じような状態になって、悪臭が発生し、燃えカスが残る。それが汚泥です。要するに、代謝に必要な酸素が足りないわけです。
すると、微生物は酸素に代わる別の気体で呼吸せざるを得ない。そのとき、硫酸イオンで呼吸してしまうと、汚泥とともに硫化水素が発生する。硫酸ガスですね。工事中に不幸な事故が起きたり、下水道管が腐食してボロボロになるのは、そういうわけです。
ですから、汚泥や悪臭を防ぐには浄化槽のなかに十分な酸素を送りこむ必要があるのですが、水は汚れるほど酸素が溶けにくくなるんですね。しかも、粘性が強くなる。どろどろとした水になるわけです。そういう水のなかに酸素を送りこむのですから、気泡はできるだけ細かいほうがいい。そして、バシャバシャと勢いよく大量に発生させて、浄化槽内に水流を生む必要がある。汚水が循環することで、底に沈殿した汚泥を巻き上げるんです。
ところが、アクアブラスターはもともと私の経験則から生まれた製品です。もちろん、しっかりとした科学的根拠もあり、導入実績を積み重ねたいまではデータを蓄積して、その検証もできていますが、当初は私も知識不足で、また経験が不足していたため、十分なサンプルがなく、排水処理の成果が不安定でした。見違えるほどきれいな水に変わることもあれば、思うような成果が表われないこともあったわけです。
そうなると、お恥ずかしい話ですが、だんだんと自信が揺らいでくる。排水処理に関する考え方や方向性は、基本的に間違っていないという信念があって独立したはずなのに、結果が出ず、お客様にお叱りをいただくと、自分がとんちんかんな研究をしていたのではないかと、不安になるんですね。でも、「そんなはずはない」と強く主張する自分もいて、創業から2年くらいの間は、ほとんど仕事がなかったこともあり、ずいぶん苦しみました。