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闘うトップ2014年1月
創業時の新鮮な気持ちを受け継ぎ浜松らしい「地ソース」をつくりたい(鳥居食品株式会社・社長 鳥居大資氏)
ソースづくりは最先端の仕事だった
地産地消を追求して、浜松の地域ブランドであることを強調するのは大切なことではありますが、そうするとどうしても高価になります。日常の食卓でお使いいただく調味料として、単純に「良質な商品」をめざすだけでよいのか。とはいえ、価格を抑制するためにこだわりを薄めた商品をつくってしまっては、私どもが浜松でソースをつくる意義を見失ってしまう。そんな悩みに頭を抱えながら、経営者としての未熟さを痛感させられているところです。
そうして自社のめざすべき道を考えているとき、思うのはやはり創業者のことですね。といっても、私が物心ついたころ、祖父はもう経営を引退していて、直接、家業について話を聞く機会はありませんでした。ですから、創業者がいったいどういう気持ちでソースをつくっていたのか、私はただ想像するほかない。二代目なら、実際に創業者の姿を見ていたはずで、直接、創業の経緯を尋ねることもできますから、そんなことに悩みはしないでしょう。三代目ならではの悩みなのかもしれません。
祖父が創業した大正末期という時代、ソースはいまほど馴染み深い調味料ではなかったはずです。もっと新鮮な印象があって、遠い外国の香りがして、それを口にすることは喜びとか驚きといった感覚にもつながったのではないかと思うんです。
そういう意味では、ちょっと飛躍があるかもしれませんが、いまの時代なら、スマホ向けのアプリを開発する会社を創業するような、若々しい躍動感や人々の生活を変えたいという使命感のようなものを感じていたのかもしれない。もちろん、時代背景が違うので、祖父が創業したころと同じような役割は担(にな)うことができないでしょうが、その気概を受け継ぎながら、現代に合ったソースづくりを追求していきたいと思っています。