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  • 闘うトップ2014年2月号

    多くの販売店と共存しながら帽子の素晴らしさを広く伝えたい(株式会社栗原・社長 栗原亮氏)

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「override」「arth」など、帽子専門店を国内外に展開する栗原の栗原亮社長。最先端の流行を採り入れた商品展開が、幅広い年齢層の顧客に支持されている。
創業以来の卸としての機能を維持しながら、SPAとしても業績を拡大する栗原社長が、これまでの歩みと経営観を語る。

東京・原宿--。栗原が神宮前に帽子専門店「override(オーバーライド)」をオープンさせたのは、1999年であった。その後、「arth(アース)」「カオリノモリ」など、テイストの異なる6ブランドの帽子専門店を展開。現在、すべて直営で国内に46店舗、海外に2店舗を出店している。帽子専門店の多店舗展開は、業界でもめずらしい。

帽子の製造卸だった同社で、小売への進出によるSPA事業と多店舗展開を主導したのは、4代目の栗原亮社長。取締役だった当時、新規事業として提案し、父で3代目の栗原裕(ゆたか)社長(現会長)の了承を得て出店した。ただし、「赤字が2年間、続けば撤退する」という条件がつけられた。

本業が安定していたせいか、社内には小売への進出をリスキーな冒険ととらえる声が強かった。さらに、創業以来、卸の看板を掲げてきた以上、小売への進出は数100社に及ぶ取引先との関係に禍根(かこん)を残すことにもなりかねない。周囲は、入社5年目の「社長の息子」の挑戦を冷ややかに受けとめた。

それでもあえて栗原社長が勝負したのは、業界を巻き込みつつある大きな変化に気づき始めたからだった。メーカーから消費者へ主導権が移り、消費者が流行をリードするようになれば、その動向を敏感に察知する感度が求められる。感度を磨くには、常に消費者との接点を確保しておかなければならない。小売への進出は、栗原が製造卸として生き延びるために不可欠な施策でもあった。

だが、現実は厳しかった。オープン直前まで準備に奔走し、当日はレセプションを開催したが、関係者以外、ほとんど来店客はなかった。以来、苦戦は続き、1年目は数1,000万円の赤字で終えた。勝負の2年目も苦境は変わらず、客足はいっこうに伸びない。撤退を覚悟した栗原社長は、責任を取り退職することを心に決めていたという。

ところが、期日まであと2か月に迫ったころ、状況が一変した。



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