-
闘うトップ2014年4月号
ブランディングの重要性に着目 ハンコの素人がナンバーワンに(株式会社ハンコヤドットコム・社長 藤田優氏)
“もやしのような会社”と言われ一念発起
そんなとき、大企業で勤務経験をもち同じようにECコマースを展開していた知人に恥を忍んで相談したのです。すると「君の会社は大地にもやしが1本ぐんぐん背丈を伸ばしているようなもの。そんなことしていたらいずれ倒れてしまう。会社というのは、ピラミッド型の組織にして太くて頑丈な幹をつくっておくことが大切だ」と忠告された。このとき初めて、自分がしてきた飲食店経営と会社での組織のあり方の違いに気がつきました。管理と名のつくものはすべて社長がやるものだと思い込んで仕事を抱え込んでいたんです。こんな組織では、いま以上には会社は大きくならないし、人の生活を便利にすることもできないと反省しました。
そこで、すぐに企業の総務や人事でキャリアをもつ年上の人を2人雇い、一から組織づくりをしてもらいました。アルバイトばかりでなく、正社員雇用もしていった。「インターネットでお客様を幸せにする」という経営理念をつくり、朝礼をはじめ、経営理念やクレド、マニュアルを作成して……と、社員が明るく働く環境づくりによいと教えられたことは全部忠実にやってきた。これでようやく会社と呼べる組織になって、私の負担はうんと軽くなりました。その後もヘッドハンティングや人材紹介会社を使って管理職クラスの人を集めてきました。
教育体制も整えました。昔は自社のホームページで気づいたところは、自分でちょこちょこ修正したりしていたんですけど、「社長がそんなことをしたら若い社員が育たないじゃないですか」とリーダー格の社員から怒られるので、最近は手を出していません(笑)。
◇ ◇ ◇
藤田社長は印鑑という商材は基本的にはネット通販に向いていないと感じている。ネット通販は化粧品やインクカートリッジなどリピートが不断に起こる商品が有効で、ハンコのように長期に使う商品は不向きだからだ。リピーターがあまり期待できないとなれば、サイトへの誘導がポイントになる。そのため、同社は創業以来、Webマーケティングには他のECコマースの何倍もの力を注いできた。実際、ビジネスサイトにおいて同社のバナー広告を見ることは多い。
◇ ◇ ◇
初期のころはホームページのデザイン性や更新頻度が当社の強みでした。他の同業者の多くが実店舗をもちながらやっていたせいか、サイトのつくりが雑だったり長く更新されていなかったりした。また、ハンコの売り方にもこう売るべきだという既成概念があったのでしょう。その点、素人の私は自由な見せ方や売り方ができました。デザインに関しては海外サイトをよくお手本にしていました。
ネットショップで重要なのはブランディングだと思っています。ネットでは、どこを経由して自社のサイトに入ってきたのかがすべてわかるのですが、1番多いのが、「ハンコヤドットコム」の社名検索から来店される方です。ハンコを買おうと思った人が「そういえばハンコヤドットコムというのがあったな」とすぐ思い出していただけるまで、露出度を高めておくことが大事ということです。
そのため、PPC広告やその一種であるリスティング広告、SEO対策やアフィリエイトなどWebマーケティングのしくみは徹底的に勉強しました。新しい広告手法が登場すれば、一度は試してみた。後から知ったことですが、グーグルが日本に進出して、02年に「アドワーズ」というリスティング広告を始めたときの第一号出稿者は当社だったそうです。
ネット広告ばかりでなく、設立して間もないころから全国紙に広告を定期的に出してきましたし、08年からはテレビCMも流し始めました。新聞やテレビの広告料金はネットとは比較にならないくらい高額ですが、これもブランディングのためと割り切っています。