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  • 闘うトップ2013年3月号

    雇用の確保でモチベーションを高め、「脱子会社」「脱赤字」を実現する(株式会社日本レーザー・社長 近藤宣之氏)

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身も蓋(ふた)もないことを言ってしまえば、世の中というのは思い通りにいかないわけです。すでに起きてしまったことを恨んだり、悩んでも仕方がない。す べては運命の必然であったと、受け入れるしかないんですね。受け入れたうえで、それを克服すべく工夫を重ね、努力する。そうして乗り越えることができたと き、身に降りかかった難題が、実は自分を成長させるための試練であったと意識のなかで昇華されて、再び新たなテーマに挑戦することができる。人生とは、そ の繰り返しなのではないでしょうか。
日本レーザーを再建せよというお話をいただいたのは青天の霹靂(へきれき)でしたが、私にほとんど迷いはありませんでした。簡単ではないだけに、挑戦に値する仕事ですから、全力で取り組んで、とにかく再建してみせるという意識しかなかったように思います。
ところが、ここに骨を埋める覚悟まではなかった。再建できれば、その実績を手土産にして、また親会社に戻るつもりでいました。でも、肝心の社長が腰掛けの つもりでいて、倒産しかけた会社が立ち直るはずがない。いくら立派な方針を打ち立てても、従業員は本気でそれに従わないでしょう。そもそも、そんな社長の もとで働かされる従業員がかわいそうです。そう気づかされたのは、恥ずかしながら、ちょうど1期目の黒字を達成するころでした。
ある日、従業員同士が話す声が聞こえてきたんです。「ばかばかしいよなあ」と言っているんですね。
「ウチを再建したら、それを勲章にして、どうせ本社に戻るんだろ? 戻ったら、社長の有力候補じゃないか。近藤さんはいいよなあ」
たしかに、彼らにしてみれば、ばかばかしい。私の実績づくりのために、利用されているようなものです。このとき、私は兼務していた日本電子の取締役を退任 することに決めました。それから3か月後、正式に退任したことを全従業員に報告したら、みんな心から驚いたようでした(笑)。

粗利重視に転換し、財務体質を改善する

社長に就任して、私はまず全従業員に雇用を守ることを宣言しました。私の方針に賛同できなければ辞めてもらっても構わないけれども、自分が社長である限 り、絶対に解雇はしない。雇用不安を解消することが、従業員のモチベーションの安定と向上に不可欠であることを、私はそれまでの経験のなかで痛感してきた からです。
その一方で、家族手当や住宅手当を廃止して、従業員の「既得権」にも切り込みました。同時に、年功序列型の退職金制度を刷新し、給与や賞与についても、ある程度、実績に連動するしくみに変えました。ただし、本給のカットや降格人事はしない制度になっています。
そして、財務体質を改善するため、売上主義をあらためて、粗利重視の管理体制に転換しました。売上実績を評価基準にしていると、営業マンはどうしても値引 きに頼ってしまいます。でも、私どもは商社ですから、もともと粗利率は高くない。売上を追求するあまり、過剰な値引きによって自ら首を絞めることにもなり かねませんでした。
そうした営業スタイルが可能だったのは、幸い、私どもに技術力があったからでしょうね。従業員の半数近くが技術系の出身で、お客様のご要望への細やかな対 応やアフターサービスに注力できる点で、同業他社と一線を画すことができました。新製品を開発することもあって、そうした強みを発揮できたことが、黒字化 の原動力になったと思います。



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(株)名南経営コンサルティング
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