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    『獺祭』を世界に広めて日本の農業にも貢献したい(旭酒造株式会社・社長 桜井 博志氏)

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品質にこだわる酒は、往々にして「幻の酒」になります。製造や品質管理に手間がかかるぶん、製造量が限られてくるのは、ある程度、仕方のないことかもしれません。でも、私は『獺祭』を幻の酒にはしたくない。決して廉価ではありませんが、ちょっとしたお祝いの席とか、贈答品などで、その気になれば誰でも手軽に楽しめる身近な酒にしたいと考えています。ですから、現在の状況は心苦しくて、最近は製造能力の増強を最大の課題としてきました。
私が3代目を継いだころ、私どもの製造量は年間700石(約126キロリットル)でした。そのうち、純米酒はわずかに10石です。それが、いまでは純米大吟醸だけで年間8000石(1440キロリットル)まで拡大しました。いまや、ものづくりのセオリーとも言える多品種少量生産とは、まったく逆方向をめざしていることになります。
このことは、私どもにとってはもちろんですが、山田錦を生産する農家にとっても喜ばしいことなんですね。つまり、『獺祭』が世界中で飲まれれば、日本の農業も潤う。そういう点でも、海外市場の開拓に努める意義は小さくないと自負しています。
とはいえ、いくら市場を遠くに求めても、私どもがこの獺越から離れることはありません。世界中のどこで飲まれようと、『獺祭』は山口の酒であって、山口から離れたら『獺祭』ではなくなってしまう。いつまでもこの獺越で製造し続けることが、地元への恩返しにもなると信じています。



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