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  • 闘うトップ2013年5月号

    町工場であり続け、次世代に職人の技を伝えたい(ダイヤ精機株式会社・社長 諏訪貴子氏)

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▲「限界ゲージ」と呼ばれるゲージの一種。これを手作業で仕上げる技術をもつ職人は、決して多くない

もともと、私どもはゲージが専門だったんです。でも、それ1本だとリスクが高いので、機械生産ができる治具にも手を広げ、やがてそれが売上の過半を占めるようになりました。私が社長に就任したとき、ゲージからの撤退すら検討していたくらいなんです。
でも、いろいろ考えた末、続けることにしました。売上の2割くらいまでに抑えていれば、何かあっても大けがには至りません。ゲージは私どもの原点ですから、その看板だけは掲げ続けようと思ったんです。
私が2代目を継いだとき、どんな経営をめざすのか、自分なりにあれこれ考えました。その点、創業者は明快です。何よりまず自分の夢や理念があって、それに賛同する従業員によって、会社が少しずつ大きくなっていく。
ところが、2代目の場合は、すでに集まっている人たちに、あらためて自分の方針を浸透させないといけません。そのとき、先代が築いてくれた会社の土台を維持することは、決して小さくない意味があると思ったんです。私がどんな経営をめざすにせよ、それはあくまで会社の起源を残したうえでなければいけない。ゲージを続けてきたのはそう考えてのことですが、リーマンショックの影響で業績が落ち込んだとき、つくづくやめなくてよかったと思いました。
もっとも、それを治具に代わる主力にするのは、大きな賭けでした。ただ、ご承知のように、その前にはプチバブルと言ってもよいような好況がしばらく続いていて、もちろんリーマンショックのような事態は想定できなかったものの、そろそろ厳しい時代に変わるだろうという予感はあったんです。
ですから、大変な状況ではありましたが、じたばたしても仕方がない。そういう時期こそチャンスだと思って、生産機械を増設したり、空いた時間を活用してベテランが若手を指導したり、ふだんなかなか手が回らないことに力を入れました。そうして、なるようにしかならないと肚(はら)を据(す)えたのが、よかったのかもしれません。きっと、運がいいんです。



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