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闘うトップ2013年6月号
伝統的な製法で品質にこだわり納豆を大阪の食文化にしたい(小金屋食品株式会社・社長 吉田恵美子氏)
▲『なにわら納豆 金司の味』90グラム 315円(税込み)大阪はもともと納豆を盛んに食べる習慣がなくて、あの独特のにおいが苦手やと、敬遠する人も少なくありません。でも、これまで納豆不毛の地とされてきた大阪だからこそ、チャンスも大きい。「食い倒れ」の街ですから、本当においしいものは受け入れられるはずなんですね。みなさん舌が肥えていて、味については本当に厳しい街だと思います。
それだけに、納豆本来の味を追求すれば、認めていただけるに違いないと感じました。そして、納豆を敬遠してきた人のために少し工夫を加えれば、大阪らしい納豆ができるのではないか。そう考えて着目したのが、亡くなった父が昔、つくっていたという天然の納豆菌で発酵させる納豆でした。
ところが、実際に昔ながらの製法でつくり始めてみると、想像以上に難しいことがわかりました。なかなか糸を引いてくれないんです。
全スタッフで生み出した天然の納豆菌でつくる納豆
大量生産に適した一般的な製法では、純粋培養した納豆菌を噴霧して、大豆を発酵させます。これは、いわば納豆をつくるために培養された納豆菌ですから、扱いやすいんですね。温度や湿度など、だいたいの条件がそろえば、それなりの納豆はできるんです。
一方、稲わらに自生する天然の納豆菌は繊細で、培養した納豆菌の場合と同じようにつくっても、なかなか納豆になってくれません。大豆の炊き加減や発酵室(はっこうむろ)の温度、湿度、発酵時間など、条件を様々に変えて試行錯誤を繰り返しました。でも、いくらやっても糸さえ引かない。失敗のたび、納豆釜を担当する母たちと顔を見合わせて、「なんでやろなあ」と首を傾げてばかりいました。
そのうち、数か月が過ぎて、ようやく糸を引く納豆ができるようになったんですが、こんどは別の問題に悩まされました。品質検査をしてみると、大腸菌が陽性と判定されてしまうんです。納豆菌を生かしつつ、それ以外は殺菌する製法を研究しなければならず、再び試行錯誤を繰り返すようになりました。
その年は、大晦日も研究を続けていた覚えがあります。私どものスタッフは全員、女性です。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたけれど、この小さな会社が生き延びることができるかどうかの瀬戸際でしたから、ずいぶん無理を言ったと思います。でも、家事や子育てに忙しいなかで、みんな積極的に協力してくれました。全員で力を合わせることがなかったら、『なにわら納豆』は完成できなかったと思います。