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中村智彦の日本一訪ねたい工場2012年6月号
「好きなものをつくる」姿勢で技術を磨き、顧客を惹きつける(株式会社ミナロ・社長 緑川賢司氏)
木型やモックアップの製造を手がけるミナロは、10年前の創業の頃からホームページによる営業に特化して全国に顧客をもち、堅実に成長してきた。
そのことが示すように、当初から独立独歩の町工場として同社はスタートしている。
その秘訣を探ろうと、横浜市金沢区に本社工場を置く同社を訪ねた。
横浜市南部の沿岸を南北に走る、新交通システム・シーサイドラインに始発駅の新杉田から乗車し、人気の観光地である八景島のひとつ手前、市大医学部で降りる。駅名の通り、駅舎は横浜市立大学附属病院に直結しているが、病院以外の駅周辺は碁盤の目状に整備された工業団地が広がっており、駅から東に10分も歩くと東京湾にたどり着く。
整然とした工業団地の一角に今回、訪問した株式会社ミナロの本社工場がある。以前は家具工場だった建物だそうだが、白い外壁に同社の赤いロゴをあしらった看板が映える。
同社はおもに木型やモックアップの製造を手がける。顧客のニーズに合わせたものを早く製作するのが同社のウリだ。通常、1週間の納期であれば、おおむね3日ほどで仕上げるという。その内部は工場というよりも「工房」の雰囲気である。人の大きさほどの精巧なアニメの登場人物やロボット、乗り物など、マニアにとっては垂涎(すいぜん)と思われる品々が事務所内に並んでいた。そうした部分だけを切りとれば「アキバ(秋葉原)っぽい」と形容できるが、同社はマニア専用グッズの製造を行なっているわけではない。
「やっぱり、ナッちゃんと並んで撮りましょう」と、ミナロの緑川賢司社長(45歳)は言って、同社訪問の記念撮影をしてくれた(以下、発言は同氏)。
ナッちゃんとは、製造業関係者に人気の漫画『下町鉄工所奮闘記ナッちゃん』(たなかじゅん・作)の主人公である。作者の了解も得て作られた等身大のナッちゃんが事務所入口で迎えてくれた。
「木型屋と一言でいっても、従来の鋳物用の型だけではなく、試作・試験用の一般にモックアップと呼ぶ模型も手がけています。使用する材質もケミカルウッドからアルミなどの金属まで様々です」
緑川社長は、以前勤務していた会社の同僚2人とともにミナロを創業した。2002年のことである。社名は、3人の苗字から1字ずつとったものだ。
「15年間勤めてきた、同じ工業団地内にあった木型工場が業績の低迷を理由に廃業することになったとき、同僚2人に声をかけ、創業したのが当社の始まりです。創業時からこだわったのは、ホームページを通じて営業することでした。私は前の会社で製造に携わりながらウェブ運営を担当し、ウェブ経由でたまに仕事をとれていたこともあって、町工場はどんどんそうした方向になると感じていました。ドメインが取得できたことと、人に覚えてもらいやすいこともミナロという社名の由来です。前の会社の取引先3社を引き継いで事業を始め、1年後には31社に増えたんですよ」
黒を基調とした同社サイトは、見る者に強いインパクトを与える。読者の皆さんもぜひ、1度のぞいてみて、自社サイトと比べていただきたい。ウェブ経由で受注を獲得するサイトが、どういった特長をもっているかがわかるだろう。
「顧客がトップページを訪れたときに、当社が何を扱う工場か、1目でわかることが大切。欲しいと思える写真や言葉がパッと目に入るようにしています」