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組織のつくり方2014年7月
この新進気鋭トップの“勇気”に学べ! 挑戦する経営(株式会社システムインテグレータ・社長 梅田弘之氏)
理想に描いた「クリーンな会社」
赤字転落を機会に、私どもはあらゆるコストの見直しに着手しました。創業以来、続けてきた新卒採用を手控えるだけでなく、オフィスを小さくして賃料を削減し、象徴的な意味合いを込めて、社員旅行も中断しました。私自身を戒めるためにも思いきったコスト削減策に取り組んだことで、従業員にも危機感が共有されたのでしょう。翌年にはどうにか黒字に回復し、以降、風通しのよい社風のなかにも自律的な厳しさが芽生えたように感じています。
ただ、そうしたコスト削減策が効果を発揮したのも、従業員の1人ひとりが私のめざす「理想の会社像」を理解していてくれたからだと思います。
私は、多くの方々に喜んでいただける商品を企画したり、商品を通じて多くの方々の仕事や生活を便利にしたいと願って起業しましたが、そうした志と同じくらいの重みで、「クリーンな会社」をつくりたいとも考え続けてきました。お客様に対してはもちろん、取引先に対しても、従業員に対しても、そして私自身に対しても、やましさのない会社でありたいというのが、創業以来、一貫して掲げ続けてきた理想でした。
そうした理想が社内に伝わっていなければ、弛みを引き締める厳しさは理解されなかったでしょう。危機を脱するための結束も、生まれなかったに違いありません。会社がクリーンであるのは当然かもしれませんが、すべての会社がクリーンだと胸を張れるかといえば、残念ながら、そうとばかりもいえないのが実情ではないでしょうか。IT業界では、とくにサービス残業の問題が指摘されがちですが、私どもでは創業当初から真剣に排除してきました。
ことし、創業から20年目を迎えた私どもは、ようやく成人に達したといってよいのかもしれません。その年代に特有の躍動感にも似た成長力を感じていますが、それはおそらく危機を克服できたからで、いまとなってはそうした苦い経験も必要だったのではないかとすら感じています。誰もが賛同し得る理想を掲げた組織は、たくましく、健全に成長すると信じています。