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組織のつくり方2013年6月号
「しかけ」を工夫した制度で働きやすい職場をつくる(株式会社コンビーズ・社長 平井武氏)
健康維持のためのスポーツイベント
ただ、単なる井戸端会議と異なる点が2つある。1つは、会議の冒頭にテーマを設定すること。通常、参加者の提案によって4つほどのテーマが設定される。社内体制の改善や新しいビジネスの提案など、業務に関するテーマが原則。参加者のなかから選ばれたファシリテーターが司会役を務め、話題の交通整理に当たる。
もう1つは、会議がボイスレコーダーで録音され、それを文字に起こした議事録が後日、全社員に配布されること。自由な発言にブレーキがかかるようにも思われるが、実際にはそういう傾向はなく、むしろ議事録を通じて全社員に意見を発信する貴重な場ととらえる社員が多いという。また、日常の不満を吐き出すだけの「ガス抜き」に陥ることもない。
「私や直接の上司に対して意見を表明するのは、朝礼や日報などでも可能です。でも、全社員に対して発言する場は、意外に少ないんですね。そういう意味で、『井戸端会議』は唯一と言ってもよい情報発信の場なんです。議事録を読むと、『こんなことを考えていたのか』と、その社員の新たな側面を発見することもあります。ふだんはあまり話さない同僚との顔合わせが、思わぬ刺激になるのかもしれませんね」
一方、「ランチDEデート」は、昼食を利用して社員同士の親睦を図る制度。1人あたり1,000円が支給され、4名が1組となって、毎月1回、昼食をともにする。これも無作為による人選で、どういう店を選ぶかは参加者の自由。
「昼食費用を補助するからといって、仕事の話をしなければならないとか、とくに決まりはありません。私が参加する場合も含めて、ごく日常的な会話を楽しみながら食事をするというのが実態です。ですから、『ランチDEデート』を行なっていることで何か顕著な効果が認められるというものではないのですが、食事中の他愛のない会話を通じて、同僚との心理的な距離が縮まる可能性は容易に想像できます。福利厚生的な意味合いもあって、社内では好意的に受けとめられているように思います。良好なコミュニケーションを水面下で支える取り組み、という位置づけですね」
このほか、同社では職場環境を改善するための小さな工夫が随所に見られる。
3か月に1回のペースで行なわれる「社内イベント」は、スポーツとしての要素を含むレクリエーション活動。もともとは単に親睦を図る目的で行なわれていたが、仕事柄、運動不足に陥りがちな社員の健康維持に少しでも役立てようと、平井社長の提案で活動の趣旨を変えた。直近のケースでは、鉄道の廃線跡をたどるハイキングを実施したという。
また、平井社長に対する提案などを書き記して、専用の箱に投函する「目安箱」も設置されている(右下写真)。周囲に気兼ねせずに投函できるよう、オフィスの片隅にひっそりと設置されていて、そう頻繁に投函されるわけではないが、なかには有用な意見もいくつかあったようだ。
制度ではないものの、肩書ではなく、名前を「さんづけ」で呼ぶ習慣も奨励。平井社長も社内では「平井さん」と呼ばれている。