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経営理念2013年2月号
成功への経験値は、躓いてこそ得られる 失敗に学び、生かす経営(株式会社エイチ・アイ・エス 会長 澤田秀雄氏)
新たなチャレンジに失敗はつきもの
もちろん、はなから失敗するつもりで挑戦する経営者はいませんが、これまでに経験していないことを1度で成功させるのは至難といえます。そして、実際に失敗してみて初めてわかることは多々あります。書物や人の話から学ぶことも大切ですが、頭の中で考えるのと実際に体験するのとでは大きく異なるのです。
ただし、失敗から学ぶことは多いとはいえ、致命傷になる失敗はいけません。失敗したら会社が倒産してしまうようなレベルの挑戦は、経営者として厳に慎むべきです。そうした失敗でないなら、失敗自体、悪いことではありません。
私の場合、成功した事業を振り返ると、必ずと言っていいほど、失敗で得た経験がその土台になっています。失敗から学びとる「経験値」こそは、将来成功するためのカギといえます。以下、私自身、失敗から何を学んだか、お話ししていきましょう。
ある程度の規模に会社を成長させた経営者なら、誰しもぶつかる壁だと思いますが、事業が軌道に乗り、業容が拡大するにつれ社員の数も増えてきます。10人が30人に、やがて100人になる。そこまでは、各人の名前も性格もやる気の度合いすらも把握することができます。しかし300人になると名前を覚えるのも困難になり、1,000人規模になると社長が把握するのは不可能となります。
実際、1,000人を超えたころ、社長である私が全体を目配りして差配するやり方が機能しなくなりました。指示命令もうまく伝わらず、私と接する機会のない末端の社員を中心に不満がたまってきます。それがきっかけとなって労働組合が結成され、初めて社内組織を整備する必要性に気づかされました。
それまで総務・人事、経理・財務、企画・営業と、すべての面を自分で取り仕切ってきたわけですが、その限界を痛感しました。これも1つの失敗であり、その規模での経営を体験してみて、会社の成長に伴って組織のマネジメントも変えなくてはならないことを学びました。