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経営理念2014年2月号
“世のため人の為”を貫いて支持を得る 本気で、善をなす会社(中村ブレイス株式会社 社長 中村俊郎氏)
的外れな批判なら誤解はいつか解ける
とはいえ、ご批判をいただいたこともありました。「カネに飽(あ)かして自由に不動産を買いあさっている」といったものです。私が島根県教育委員会の委員長を拝命していた関係から、「県の補助金を優先的に使っている」という事実無根のご批判を頂戴したことすらありました。
言うまでもなく、私自身は地元のために「よかれ」と思って取り組んできたつもりです。ところが、真意がどこかで誤解されて、私の言動を一種の「偽善」ととらえる方もいる。そう思われてしまう私の不徳です。しかしながら、正直なところ、当初は本当に悩みました。資産価値の高い都心の不動産ならともかく、住む人のいない廃屋同然の建物を買い取ったところで、当然、社業に貢献するわけもなく、私個人にとっても利益があるとは思えません。ご批判を受けてまで取り組むべきことなのかと、妻とともに考え続けました。
しかし、そもそも楽天的な性格なのでしょう。的外れなご批判なのですから、いずれ誤解も解けるに違いないと考えるようになりました。いや、そう信じるように努めたと言ったほうが、より正確かもしれません。自分が正しいと信じることは、誰が何と言おうと続ければよい。続けることこそ、正しさの証(あかし)になる。そう考えて、自分が「善」と信じる道を歩むしかないのかもしれません。
いま、あらためて振り返ってみると、私がそんなふうに気持ちを切り替えることができたのも、父の影響ではなかったかと思い当たることがあります。
私がまだ中学生だったころ、町の収入役を務めていた父章一はよく「実業家になったらええ」と言いました。起業家でも社長でもなく、「実業家」という言葉でした。当時はよく理解できませんでしたが、のちに考えてみると、父は「実業家」という言葉に社会への貢献や奉仕といった意味を込めていたのではないかと思うようになりました。以来、ことあるごとに思い出し、父の期待を裏切らない男でありたいと思い続けてきました。
どんな逆境にもめげず、地域や社会のために信念を貫く本物の「実業家」が、今後、ますます必要とされるのではないでしょうか。