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経営理念2012年11月号
凡事をまっとうして地域・顧客の支持を得る “当たり前”をたゆまず貫く会社(NPO法人日本を美しくする会 相談役 鍵山秀三郎氏)
企業の繁栄は、顧客や取引先、地域社会などの支持があって成り立つ。
支持のもととなる信頼を得るには、日々のふるまいや仕事ぶりが大きくものをいうだろう。
そこに近道はなく、事業を進めるうえで“当たり前”に大切なことの多くは「言うは易く行なうは難し」で、継続してこそ成果が上がる。
自社が大切にすべき“当たり前”を定義し、ぶれることなく貫いて社員を導くトップの姿に学ぶ。
【提言】「始める勇気」と「続ける根気」で打算を排して取り組む
NPO法人日本を美しくする会 相談役 鍵山秀三郎氏
生来、私は口下手で、1日中、誰とも口をきかずに済むならそうしていたいと思うほど、実は無口な男です。昔から、他人様の前でお話しするのは苦手なのですが、いまからちょうど20年前、私は初めて掃除について講演する機会をいただきました。以来、ありがたいことに同様のご依頼が続いて、2年後の1994年には、講演をもとにした『凡事徹底』という本を出版しました。ご承知のとおり、「凡事徹底」とは「誰にでもできることを誰にもできないほど続ける」といった意味の言葉です。
そのころから現在までの時間は、わが国の経済が「失われた」と表現される時期と、ほぼ重なります。実際、いまだに経済は好転していません。それも停滞といった生やさしい状況ではなく、むしろ悪化しているようにさえ思えます。加えて、老若を問わず人心はますます荒(すさ)み、社会全体が疲弊(ひへい)してしまっている。「凡事徹底」の大切さを1人でも多くの方に認識していただきたいと思い、微力を尽くしてきたつもりですが、残念でなりません。
しかしながら、私は決して悲観していません。社会全体から見れば小さな動きかもしれませんが、「凡事徹底」は着実に浸透しているからです。具体的に言えば、掃除ですね。NPO法人「日本を美しくする会」の活動を通じて、掃除の輪は確実に、全国へと広がっています。現在、国内130、海外4の「掃除に学ぶ会」が活動し、毎年、10万人以上の方々が参加して、地元の学校や駅周辺などの街頭掃除に努めています。
掃除は、人の心を穏やかにします。そして、掃除には様々な学びがある。「凡事徹底」は人を変え、企業を変え、社会を変えるのです。私がそうした信念を抱くのは、現実に多くの人たちが変わっていく姿を目にしてきたからでした。