-
事業再生2012年8月号
ハウステンボス再生への軌跡(ハウステンボス株式会社・社長 澤田秀雄氏)
即断即決の意思決定とたゆまぬ改善で蘇る
いままでより仕事のスピードを2割速くしようとも訴えました。そうすれば経費を2割減らしたのと同じ効果があります。私自身も電動アシスト自転車でパーク内を駆け回り、率先垂範しています。
---なるほど。売上を二割増やすことについてはどのように?
売上は客数と客単価で決まります。客単価は滞在時間に比例します。お客様を増やして長く楽しんでいただくことに取り組みました。入場料を3,200円から2,500円に下げることで客数を増やし、魅力あるイベントを次々と繰り出すことで滞在時間を伸ばす取組みをしました。
それは旬の企画、ここでしかやっていない企画、日本一、世界一の企画です。旬といえばAKB48のコンサートや、いま1番人気のあるアニメ「ONE PIECE」に登場する船の常設など。ここでしかないのは100万本のバラや日本初公開の作品が36品も展示されるゴッホ展(12年7月29日~10月28日開催)、ガーデニング世界大会など。冬場の夜間のイルミネーションは以前から行なっていますが、まず日本一にしようと10年には700万球、11年には820万球と東洋一の規模でやっています。大手検索サイトの夜景ランキングでは2年連続で全国1位に選ばれました。
---いわゆるキラーコンテンツですね。10年4月に社長に就任され、こうした基本方針により同年九月期決算(決算期変更に伴い半年決算)でいきなり黒字化します。
ですが、翌年3月の大震災の発生後は入場者の2割を占めていた海外客が壊滅的な状況になりました。団体客も自粛ムードで激減。すぐさま私は戦略転換を指示しました。影響の少ない西日本の個人旅行に集客活動を集中。それでも客数増は期待できないので客単価を上げる仕掛けを次々と投入しました。11年9月期の客数は前年対比117%の180万人にとどまりましたが、売上は130%増で2期連続黒字決算できました。12年9月期も前期を大幅に上回る黒字基調で推移しています。
---まことに素晴らしい再生ですね。
いえ、このようにお話しすると打つ手、打つ手がピタッとはまっていったように聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。何事も初めからうまくいくものではありません。失敗も数多くしていますし、成功のように思われることでも改善の余地は多々あるのです。まず、やってみる。意思決定は即断即決が基本。早くやれば結果も早く出る。そして反省をしっかりする。失敗の原因や改善点をつかみ、改良してもう1回やってみる。そうすれば前より1~2割はよくなるものです。この積み重ねです。われわれは天才でも手品師でもないのです。
黒字体質になってきたのは社員の努力の結果ですが、多くの方々の応援があったからでもあります。とくに再生に取り組む姿をたくさんのメディアが好意的に取り上げてくださったことが大きかったですね。私が見るにHTBはまだ57点。あと1~2年で70点にして若手に任せたいと思います。
---最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
ことしは開業20周年です。再生3年目ですべての要素の完成度を上げるべく取り組んでいます。上海・長崎の定期就航便HTBクルーズが7月より定期就航します。片道7,800円からとローコストですが、28.5時間の船旅を楽しく過ごせるエンターテインメントシップです。東洋一美しい観光ビジネス都市の実現に向けて取り組んでいきます。