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キラリと光るスモールカンパニー2013年7月号
光造形の草分けとして鋳造にも取り組みメイドインジャパンの底力を世界に発信(株式会社ジェイ・エム・シー・社長 渡邊大知氏)
365日昼夜稼働で圧倒的な短納期を実現
JMCの昨年度の売上は6億円。光造形と3Dプリンターによる事業が4割、鋳造が6割を占める。光造形でいったん試作してから、アルミ鋳造を依頼する顧客が多いという。
取引先は230~250社で、毎月5件ずつ新規が増えている。業種は自動車の外装・内装品が最も多いが、そのほかは多岐に渡り、歯科、時計・宝飾、文具、パソコン、携帯電話、プリンター、メガネなどだ。ホームページを通じた注文が多い。
光造形などの機器類は市販品だが、JMCの強さはこれまで培ったノウハウと圧倒的な短納期にある。昼夜二交代制で、365日注文を受けつけ、金曜日の夜や土曜日に受注しても月曜日には納品する。大半の注文が当日あるいは翌日出荷だ。
「私たちは製造業でありながらサービス業に近い。見積もりは夜でも受け付け、1時間で回答します。他社には真似できません。注文の7割は相見積もりなし。リピート率は8割以上です。注文の量や額でサービスに差はなく、同じ納品スピードと品質で顧客に届けます。したがって、高額の取引でも値引きしません。とはいえ、価格が高いわけではなく、相場より2~3割安い。一般より倍以上のスピードで、安いのですから値引きには応じられないのです」
同社の経常利益率は製造業としては高く、10数%に達する。来期は20%が目標だ。これだけの短納期を実現しているわけは、業務プロセスの分散化と社員の多能工化にある。同社では、業務を細かく分解して、各プロセスの生産効率を上げている。
たとえば、見積もり依頼をメールで受けると、返事を綴る作業と、見積もり額を算出する作業、見積もり書を作成する作業をそれぞれ別の社員が担当して、1人に完結させない。これは「仕事を属人的にしない」という渡邊社長の独特の哲学がベースにある。
頻繁にジョブローテーションを行ない、営業、製造、経理など社員が複数の業務を担当できるように教育している。新しい分野の仕事を次々と任されるため、社員は絶えず「慣れない」し「落ち着かない」が、そうした状態が、社員を活性化すると渡邊社長は考えているのである。
「この仕事はあの人にしかできないとか、職人を超えた神の手というのが嫌いなんです。Aさんしかできないとなると、それがステータス化して、Aさんは人に技術やノウハウを教えず地位を守ろうとする。当社は医療関係の仕事も手がけるので、人によって品質が違う職人仕事では困るのです。安定して平均化された品質や納期を確保するために分散処理が必要でした」