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キラリと光るスモールカンパニー2013年4月号
家業の撚糸加工を進化・発展させ特殊糸や化学製品を独創する(丸昌産業株式会社・社長 小久保和浩氏)
大正12 年の創業以来、撚糸加工を家業としてきた丸昌産業は、三代目の小久保和浩社長が入社してから事業内容を大きく転換した。撚糸を徐々に減らし、他社が真似で きない「変糸(かわりいと)」など特殊糸を開発。その延長線上で、光触媒を利用した防汚・防臭・防カビ効果をもつ水溶液や遮熱効果のあるコーティング剤な ど画期的な化学製品も生み出した技術力に注目が集まっている。
日本の繊維産業の衰退はいまに始まったことではないが、業界全体が縮小しようとも、努力と工夫によって生き残る企業は必ず存在する。その手本ともいえるのが創業大正12(1923)年で、ことし90周年を迎える老舗の丸昌産業である。
同社は戦前より繊維産業の盛んだった栃木県佐野市に本社を置く。周辺地域には、いまも家族経営的な零細企業が残っているが、地域全体の経済的沈下は避けよ うもない。丸昌産業も撚糸(ねんし)と呼ばれる糸を撚(よ)る加工を請け負い、家族経営を続けてきた。だが、三代目の小久保和浩社長(49歳)は、93年 に29歳で入社すると、果敢に事業転換に挑み、同社を開発型企業へと変貌させた。
現在、丸昌産業は下請けとしての撚糸加工は行なわず、同社にしかできない付加価値の高い糸として「変糸(かわりいと)」や、熱に強い糸、刃物でも切れない 糸、汚れにくい糸など機能性の高い特殊糸を開発し、国内外の有名アパレルブランドにOEM(相手先ブランド製造)の最終衣料品として納めている。海外で は、パリ・コレクションに出品するような有名ブランドを中心に九か国の企業に納入するなど、高い評価を受けている。
光触媒を用いた汚れにくい糸の開発を進めるうち、防汚・消臭・防臭・抗菌・有害物質除去効果などをもつ水溶液「M-クリーン」の商品化にも成功。建物の外壁や室内、地下鉄車両、LAXA(宇宙航空研究開発機構)のH-Ⅱロケットなどにも利用されている。
同社社屋の外壁パネルにも塗布されており、8年経過した現在でも効果は持続していて塗布されたパネル2枚分だけが、際だって汚れが少ない。