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  • キラリと光るスモールカンパニー2013年4月号

    家業の撚糸加工を進化・発展させ特殊糸や化学製品を独創する(丸昌産業株式会社・社長 小久保和浩氏)

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父が病に倒れ急遽、家業を承継

sc_1304_4昨年発売した超親水性コーティング剤「セルフェイスコート」も画期的な商品である。親水性とは、水が素材の表面になじむ状態を指し、親水処理を施すと水が 表面に広がるため、簡単な水洗いで汚れを落とすことができ、曇り止め効果も高い。親水の逆は撥水(はっすい)だが、撥水状態では表面に水滴ができやすくな るため、曇りやすく、汚れも残りやすい。セルフェイスコートを窓ガラスや鏡に塗れば曇り止めになり、高層ビルの窓ガラスや看板に塗ると、雨などによって汚 れが自然に洗い流される。大手自転車メーカーと提携し、サンバイザーとセットにして販売する話も進んでいるという。
こうした高機能の化学製品を次々と開発できるのは、どうしてなのか。「お客さんの困ったことや声を聞いているから」と小久保社長は語る。とはいえ、化学製品メーカーになるつもりはなく、「あくまでも繊維にこだわりたい。繊維なら何でもつくれる自信がある」とも言う。
そもそも小久保社長は次男で、家業を継ぐつもりはなかった。群馬大学工学部で繊維工学を専攻し、卒業後は大阪の大手アパレル会社に就職。ゆくゆくは自分でアパレル関係の会社を設立しようと思っていた。
「93年、父ががんで入院することになり、そのとき初めて会社を継いでほしいと言われました。兄はすでに接骨院を経営しており、継ぐことができるのは私し かいなかったので決心したんです。当時は、身内を2人ばかり雇う家族経営の会社でした。父の存在は大きく、闘病生活に入ると会社は赤字状態に陥ってしまい ました」
小久保社長は撚糸の賃加工を続けていたら先はないと考え、まずいろいろな変わった糸を製造できる機械を開発することにした。大学で繊維工学を修めていたため、3か月程度で組み立てることができたという。
「売り物ではないし、資金もないので、部品がむき出しの体裁の悪い機械でしたが、パーツを組み替えることで多様な糸を製造できる装置でした」
小久保社長はその機械を駆使し、様々な素材を使って風合い、装飾、撚りに工夫を凝らした糸をつくった。これが「変糸」である。前職で企画部門を担当していたため、アパレルメーカーや有名ブランドが欲する糸のニーズをつかんでいた。
手づくりの機械だけに大量生産はできなかったが、付加価値の高い糸を何種類もつくり、アパレルメーカーに片っ端から持ち込むと、予想通り、目新しい糸に対する反響は大きく、多くのメーカーに採用された。
「もちろん日銭も稼がないといけませんから、撚糸加工を続けながら、少しずつ事業を転換していきました。資金も不足しているなか、得意先や仕入先を入れ替えていくのは苦しかったですね。一から始めるのも大変だと思いますが、事業転換するのも難しいですよ」
軌道に乗るまで2年ほどかかった。小久保社長はその間、自身への報酬なしで踏ん張った。
何か変わった糸ができないかと試行錯誤を続けるうちに、冒頭に挙げた熱に強い糸や刃物でも切れない糸などの特殊糸の開発につながった。さらに、洗濯不要の 糸でつくる服ができれば面白いのではないかと小久保社長は考えた。そのためには、自己洗浄作用のある糸をつくらなければならない。思い当たったのが光触媒 の活用だった。



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(株)名南経営コンサルティング
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