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  • キラリと光るスモールカンパニー2013年3月号

    世界初、バネを使ったメンテナンス不要の濾過装置を開発し見事に下請けから脱皮(株式会社モノベエンジニアリング・社長 物部長順氏)

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海外からの大型案件への対応に課題も

sc_1303_4「既存の濾過設備の代わりに導入するケースは少ないので、新設の工場への納入が多いですね。従来の装置で有害物質を濾過する場合、水槽の下に沈降させるた めの凝集剤を使わなければなりませんでしたが、モノMAXにはそうした処理剤も不要です。処理剤である化学薬品などは、1トン当たり100万円もする高価 なものがありますから、ランニングコストの少ないモノMAXを備えれば、すぐに元がとれますよ」
モノMAXは使用するバネ式フィルターの本数やサイズによって様々なバリエーションを用意できる。フィルターを10~20本程度使う小型装置ならば300万~500万円から。大型装置では数1,000万円になる。
モノベエンジニアリングに隣接する特別養護老人ホームでは、5年前に飲料用地下水の濾過用としてモノMAXを導入。同ホームはショートステイやデイサービ スなども併設する施設であり、従来の水道水に比べて年間800万~900万円の経費節減につながった。装置代が約2,200万円だったが、これまで部品交 換もしていないので、約3年で元がとれた計算だ。
「お客様から用途や仕様に関するお話をうかがって、当社の製品を導入することでお客様にメリットがあるかどうか判断して対応を決めています。商談は当社に あるデモ機をご覧いただき、仕組みを理解してもらってから始めるんです。難しい案件でも技術的に挑戦する価値があればお引き受けしています。ただ、家庭用 はいまのところお断りしている状況です」
同社では、とくに積極的な営業をしておらず、販売代理店も置いていないが、電話やホームページを通じて多くの問い合わせが舞い込んでいるという。
唯一、濾過関連企業などと提携して販売しているが、それらの企業が自社の装置で対応できない案件を同社に持ち込むので、技術的な難度が高い仕事が多い。海外からの引き合いも増えており、現在までにフランス、イタリア、韓国、タイ、中国、フィリピンなどに納入した。
現在、上海交通大学と共同開発で上海の河川浄化や巨大な化学工場の排水処理などの案件を進めているが、具体化はまだ先のようだ。同社は、環境学で著名な瀧 和夫元千葉工業大学教授を招き、自社に研究室を設けて共同研究を行なっている。瀧氏は上海交通大学の客員教授でもあり、同プロジェクトを一緒に進めている のである。
このほか、中近東からも海水を飲料水に変える装置の開発に関する相談が持ち込まれるなど、大型案件は複数ある。ただ、同社の限られた人員では、海外に駐在してまで対応できないのが課題だという。
「大半の総合商社の部長クラスの方にもおいでいただきました。デモ機をご覧になると感心されるのですが、その後、商談が具体化することはありません。それ は、モノMAXがフィルターなどの消耗品を使わず、メンテナンスも不要だから。商社が扱っても装置を納めたら終わりで、その後に収益を上げられないんで す」
こうした収益構造ができあがっている濾過業界では、画期的で優れた製品ほど受け入れられにくいようだ。



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(株)名南経営コンサルティング
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