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  • ビジネスの視点2014年1月号

    明るくひたむきな挑戦で急成長 この「伸び盛り企業」がすごい!(環境経営総合研究所・社長 松下敬通氏)

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そば屋で石臼を見て古紙の粉砕機を開発

だが、製造の知識も設備も、何もない。松下社長は開発製造の協力を得るため、取引先を50社ほど訪問した。だが、誰も信用してくれない。そのうち、福岡の1社が協力してくれることになった。

松下社長は、おからの代わりになる廃棄物を探しては、その会社に持ち込んだ。お茶やジュースの絞りかすなど、いろいろと試したが、どれもダメ。ふすま(小麦のぬか)からは緩衝材ができたが、虫がわいたり、ネズミに食べられたりで、納入先に怒られた。半年以上試して、もうあきらめようかと思った矢先、知り合いの産廃業者からリサイクルできず処分されている廃棄古紙のことを聞いた。

早速、製本業者から出る廃棄古紙を協力会社に持ち込み、少量つくってみると、弾力性と耐久性のある緩衝材ができた。食品残渣(ざんさ)ではないので、虫もわかない。松下社長は製本業者を回り、廃棄古紙を集めたが、色紙やガムテープ、金属片などが混在していて、仕分けに苦労した。

もう1つ、苦労したのが、古紙の粉砕だ。合成樹脂と混ぜ合わせるには微細なパウダー状にしなければならないが、通常の粉砕機ではできない。粉砕機は硬くて重い鉱物などを砕くのは得意だが、紙のように軽くて軟らかいものは対応できないのである。松下社長はあきらめかけたが、偶然、そば屋でそば粉を石臼で挽く光景を見た。「これだ」と直感した松下社長は、石臼状の粉砕機をつくってもらって試したところ、うまくいった。だが、量が少なく時間がかかりすぎる。そこから粉砕機づくりが始まり、2年半かけて試行錯誤を続け、すりつぶす刃などを改良し、2002年に完成した。

紙パウダーと合成樹脂を均一に混ぜるのにも苦労したが、専用の押出機で原料を投入し、低温で均一に混練する独自技術を開発し、実現した。また、発泡剤を使わずに加熱圧縮する水蒸気発泡という新技術も開発し、アースリパブリックが誕生した。

最初に売り込んだのは、自動車メーカーのマツダだった。大手と取引できれば信用が得られると考えたのだ。ちょうど、マツダも部品を海外に輸出する際に使う安全無害の緩衝材を探していたので、意外にもすんなりと契約できた。このとき、先方の信頼を得るために活用したのが、前述の賞や公的助成である。松下社長は、この時期、寝る間を惜しんで申請書類を書き続けた。

その後も工場建設や自動化ラインづくりに多額の投資をして、資金繰りには苦労し続けているが、リスクを取った挑戦が今日の同社の成長を支えてきた。

「『もうダメだ』とは、いつでも言えます。でも、多くの人に応援してもらいながら、何も応えることができずに終わるわけにはいかない。たとえ行き詰まっても、いつか必ず突破口は開けます。よいことは続かないけれど、悪いことだって続かないんです」

松下社長は今後、中小企業を含めた企業同士の連携を強化したいと言う。同社がリサイクル可能な材料は、古紙から産業廃棄物に広がりつつある。連携のなかで、互いに成長できる好機が眠っているはずだ。



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