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ビジネスの視点2014年5月号
自らを成功に導く発想・姿勢・習慣をつかめ! 運を呼ぶ経営(千房株式会社・社長 中井政嗣氏/株式会社エンジニア・社長 髙崎充弘氏)
積極的な謙虚さが心を平静に保つ
髙崎 まっすぐに生きるとおっしゃったことにもつながるように思うのですが、私は心身ともに浄化して、清新な状態を保つことが大事かなと思っているんです。私にとって、心身を浄化してくれる場所は神社なんですね。ですから、出勤時と帰宅時には、途中にある神社に必ずお参りするようにしています。
中井 何かお願いなさるのですか。
髙崎 いいえ、ただ感謝するだけです。そして、二礼二拍手一礼を終えると、どういうわけか気持ちがすーっとするんです。出張のときにも、その土地の神社にお参りします。海外に出張する場合は、太陽に手を合わせます。
中井 立派なお心がけですね。
髙崎 その土地の神様に仁義を切るような感覚です。
中井 そういう感覚は、私にもよくわかります。でも、私の場合、20代くらいまでは神社であろうがお寺であろうが、頼みごとばっかりでしたね。
髙崎 私も同じです。ただ、年齢を重ねるうちに、一方的に頼みごとばっかりするのは少々、筋違いではないかと思うようになってきました。神頼みをする気持ちのなかに、そのつもりはまったくないけれど、最終責任者としての覚悟の甘さが潜んでいるような気がしたんですね。心のどこかで天佑(てんゆう)をあてにしているうちは、経営者としての仕事をまっとうしようという覚悟が足りないのではないかと思ったんです。まずは、自分の全力を尽くすことに没頭する。そして、それができたことを神様に感謝するのが筋ではないかと思っています。
中井 私も同感です。神様も仏様も実体はありませんから、「無」なんですね。ところが、人間は無に対して手を合わせたり、拝礼したりする。それは、ある種の謙虚さを忘れないようにするためだろうと思います。望みどおりの結果が出ても、残念ながら、そうならなかったとしても、挑戦する機会を与えてもらったことに感謝したり、全力を出し切ることができたことをありがたいと感じる心。そういう謙虚さは、いわば積極的な謙虚さです。
髙崎 尻込みするような謙虚さではなくて、前向きな謙虚さですね。
中井 そうです。そういう謙虚さがあるから、自分にとってよいことも悪いことも、素直に受け入れることができるのではないでしょうか。世の中、よいことは続かないけど、悪いことも続きません。そういうバランスの取れた考え方でいれば、平常心を維持することができます。平常心さえ保っていれば、重大な判断に迫られても、そう大きくは判断を誤らないような気がします。
髙崎 勉強になります。
中井 お風呂の温度がちょうどよかったりすると、われわれは「よい加減」と表現しますが、言い得て妙というか、実に示唆(しさ)深い言葉ですね。物事には必ず両面があって、「加える」があれば「減る」もある。何かで得をしたら、その裏側では何かを失っているわけです。逆に、損をしたと思っても、自分の気づかないところで何かを得ている。そう考えると、目先の利益に惑(まど)わされることもなくなるでしょう。そして、たとえ悪いことが続いても、そのうち必ず運がめぐってくると信じることができます。