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ビジネスの視点2014年5月号
自らを成功に導く発想・姿勢・習慣をつかめ! 運を呼ぶ経営(千房株式会社・社長 中井政嗣氏/株式会社エンジニア・社長 髙崎充弘氏)
解決の糸口は目の前にある
髙崎 私の父が昔、常々、言っていた言葉が「人間(じんかん)、万事塞翁(ばんじさいおう)が馬」や「禍福(かふく)はあざなえる縄のごとし」でした。若いころは、さして気にも留めなかったのですが、近ごろは「なるほどなあ」と腑(ふ)に落ちることがあります。
中井 よいことばかり続かないと思うから、人間は努力する。そして、悪いことばかり続かないと思うから、夢も希望も湧(わ)いてくる。せっかく成功しても、晩節を汚(けが)したと言われる経営者もいますが、そういう人は成功が延々と続くと誤解なさったのかもしれませんね。だから、努力を怠(おこた)ってしまった。
髙崎 努力するから「禍」が「福」に変わるわけですね。
中井 もちろん、本人の努力が大前提です。それと、「人」なんですね。人との出会いが、禍を福に変えてくれる。
髙崎 運は縁だとおっしゃるのは、そういうことですか。
中井 はい。私は、これまで何度も窮地に追い込まれ、そのたびにどうにか難題を克服してきましたが、よく振り返ってみると、問題を解決してくれたのは常に縁のおかげでした。しかも、決して遠い縁ではないんです。一見、遠くから助けにきてくださった人でも、実は私の身近な人とつながっていたりする。解決の糸口は目の前にあったというのが、私の実感です。
髙崎 そう言われてみると、私も同じかもしれません。
中井 これは、つまり身近な人を大切にしなさい、ということですね。すると、そうした人たちにも、それぞれに独自のつながりがありますから、見方を変えれば、たった1つの縁を大切にすることによって、何百人、何千人というつながりを得ることにもなります。
髙崎 いま、こうして貴重なご縁をいただいたわけですが、これも単に中井さんと私との個人的な問題ではなく、それぞれの背後にたくさんの縁がつらなっているということですね。
中井 髙崎さんと私とで、何千人もの縁を背負った「サミット」をやっているようなものなんです(笑)。
髙崎 責任重大ですね(笑)。
中井 そうなんです。ですから、縁は自分のために使ってはいけません。人脈とは、他人様のために使ってこそ強まる。髙崎さんと私という点同士が結びついて線になり、その線が再び新たな縁を得て面になる。そういう面の集合体が、いわゆる「器(うつわ)」ではないでしょうか。その人の器量ですね。
髙崎 そうすると、運というのは器量そのものだと言えそうですね。
中井 そうかもしれません。
髙崎 実に興味深いヒントをいただきました。ありがとうございます。
中井 こちらこそ、運という言葉を通じて、あらためて経営者としての心のもちようを考えるヒントをいただきました。ありがとうございます。